ななつの嵐山WEB MAGAZINE

コラム2019.07.09

千年の歴史を持つ嵐山の鵜飼

嵐山の夏の風物詩といえば、その筆頭は鵜飼でしょう。日の落ちた夏の夜、鵜匠のもつ手縄につながれた6羽の鵜が水中に潜って川魚をとらえます。かがり火の灯りのなか、鵜匠の見事な手さばきに、観客たちはすっかり見入ってしまうのです。

貴族たちが好んだ大堰川周辺

「いと木繁き中より、篝火どもの影の、遣水の螢に見えまがふもをかし」。これは『源氏物語』の第19帖「薄雲」の中の一部分。木立の合間から見える鵜飼のかがり火が、遣水の周りを飛び交う蛍のように見えるという意味で、明石の君が住む大堰の邸から、光源氏と明石の君が大堰川で行われている鵜飼の篝火を見て歌を詠む場面です。平安時代にはすでに大堰川で鵜飼が行われていたのですね。

渡月橋から上流を大堰川と言いますが、平安時代、豊かな自然に囲まれた大堰川周辺は貴族たちの遊び場でした。歌を読んだり、舞を舞ったり、楽器を奏でたり…。大堰川に船を浮かべる舟遊びも貴族たちは盛んに行いました。そんななか、清和天皇(850〜880)の時代に宮廷鵜飼が行われたことが嵐山の鵜飼の始まりと言われています。

まるで平安絵巻のワンシーン

風折烏帽子(かざおれえぼし)に腰みのという衣装に身を包んだ鵜匠が、平底の小船に乗り込み、鵜をつないだ手縄を握ります。舵子(かじこ)がかいの音を鳴らすと、その音に反応した鵜が水中に潜って川魚を飲み込みます。鵜が獲物を飲み込んでしまう前に鵜匠は手綱を引き寄せ、喉をつまんで吐き出させます。かがり火の灯りに照らされた水面にキラキラと白く輝く魚が跳ねる様子はとても美しいものです。

嵐山では、この鵜飼の様子を屋形船に乗って鑑賞することができます。渡月橋や川岸から眺めるのもいいのですが、おすすめはやはり屋形船からの鑑賞。鵜匠たちの船にぐっと近寄るので、鵜匠たちが奮闘ぶりを間近で見ることができます。舵子の鳴らす音と篝火の灯りに魚が集まってくると、鵜匠たちの威勢の良い掛け声が。その掛け声に合わせて水の中に潜っていく鵜の様子はまるで踊っているようにも見えます。鵜匠が魚を吐き出させると、観客からは拍手喝采。平安時代の貴族たちも同じように楽しんだのでしょうか。

(撮影協力:嵐山通船)

嵐山の鵜飼は、7月1 日から9月23日まで。予約不要の乗合船のほかに、予約をすれば平安王朝の宮廷鵜飼船を復元した船に乗ることもできます。夕暮れ時の涼風を感じながら、平安貴族の気分に浸ってみませんか。

 

<本文監修>

観光ガイド「京都旅屋」代表   吉村晋弥   プロフィール>