ななつの嵐山WEB MAGAZINE

インタビュー2019.12.17

身を清め縁を結ぶ、古式ゆかしき嵯峨野の神社へ

嵯峨野の一角にある野宮神社。

源氏物語の賢木(さかき)第十帖、光源氏と六条御息所の別れのシーンの舞台となっている歴史ある神社で、現在は縁結びや進学にご利益がある神社として、地元の方のみならず国内外から多くの参拝客が訪れます。

今回はこの野宮神社で宮司を勤める懸野直樹さんに野宮神社と嵐山の魅力について伺いました。

 

原初の信仰の姿を今に残す神社

野宮神社は、かつて伊勢神宮に仕える斎王と呼ばれる皇族の独身女性が伊勢神宮へと向かう前に身を清める場所でした。

源氏物語に登場するのも、六条御息所の娘が斎王となって伊勢へと向かう時の話となっています。この身を清めるという場所という性質から、野宮神社は悪い縁を断ち切り、良い縁を結ぶ場所としても信仰されるようになりました。

さらに、境内には伊勢神宮の祭神である天照大神様や白峰弁財天様、野宮大黒天様など数々の神様とともに、手を触れると願いが成就するという神石(お亀石)も祀られています。
1000年以上の歴史を経て、野宮神社は日本古来の宗教だけでなく地元の人々の伝承をも受け継いだ、地域の人々の大切な祈りの場となっているのです。

また野宮神社は、原初の日本の宗教の姿を今に残しているという点も大きな特徴。それが最もよくみられるのが参道前にある黒木鳥居。樹皮がついたままのクヌギで作られており、これは日本最古の鳥居の形なのだそう。神社の周囲にぐるりと巡らされた小柴垣も、古い時代の神社の姿を今に残しています。

 

しめやかに行われる野宮神社のお正月

普段は観光客でいっぱいの野宮神社ですが、これから迎える大晦日らからお正月にかけては、地元の方々がゆるりとお参りに訪れる静かな空気が流れます。元旦には、地域の消防団が神社を訪れ、纏(まとい)を振るって境内を清め、一年の火伏せを祈願するなど珍しい光景を見ることができます。また時折、祇園の舞妓さん・芸妓さんが訪れることもあるそうです。

 

 

日本の歴史が凝縮されている嵯峨・嵐山

現在では国内外に知られた嵐山ですがこの地に住んでいる宮司の懸野さんにとって嵐山はどのような魅力ある場所なのでしょうか。

懸野さんはこう答えます。

「実は嵐山周辺には旧石器時代から人々が暮らしを営んでいました。この地が景勝地となったのは8世紀頃。平安時代には貴族の別荘地となりました。小倉百人一首の舞台となった小倉山もすぐ近くにあります。その後も、江戸時代には松尾芭蕉を含めた多くの旅人が訪れていますし、明治・大正期の文学などにも大きな影響を与えています。嵐山に今も残る美しい社寺や旧跡はいわば日本の歴史の縮図なのです。駅前だけを通り過ぎるのではもったいない、1日ゆっくりと歩いて巡れば、そこかしこにあっと驚くような歴史との出会いが待っているはずですよ」

 

オススメの嵐山絶景スポットとは?

懸野さんが“最も嵐山らしい場所”であると感じるのは、落柿舎前や広沢の池周辺の田園風景なのだとか。

「落柿舎の茅葺の屋根とその前に広がる小豆の畑、さらにその向こうには小倉山に愛宕山。この地域は、平安貴族がこの地で遊んでいた時代の風景を今もそのまま残しています。牧歌的なのにどこか華やかなこの景色の中に身を置いていると、時が止まったように感じますね」。

 

数々の歴史に彩られた嵐山、皆さんも訪れた際はちょっとガイドブックやスマホから目を離して、自分の足でお気に入りの風景を探してみては?

もしかしたら、その場所は平安貴族やさらにもっと昔の人々の時代から大事に守り続けられている場所かもしれませんよ。

(取材協力: 野宮神社