ななつの嵐山WEB MAGAZINE

コラム2018.11.06

「静の祭」から「動の祭」まで、懐深い嵐山の秋祭

「京都」と聞いて、芸妓(げいこ)の艶やかな姿を思い浮かべる人は少なくないはず。

その芸妓の世界で最高位に当たるのが「太夫(たゆう)」。見目麗しく芸に秀で人柄も優れた太夫たちは、和歌に唄われ歌舞伎の主人公ともなり、数百年の時を経て語り継がれてきました。そんな名太夫の先駆けと呼ばれているのが、嵐山と縁の深い「夕霧太夫(ゆうぎりたゆう)」です。

太夫に求められるのは美と体力?

京都嵯峨で生まれたとされる夕霧太夫を偲び、その墓が置かれた清凉寺では毎年11月の第二日曜に供養祭『夕霧祭』が行われます。

美しい装束をまとった太夫の舞の奉納や、禿(かむろ/太夫の世話をする少女)を従えて歩く太夫道中が見所。ちなみに京都銘菓「生八つ橋」のブランドのひとつ「夕霧」もこの大夫の名前に因んだそう。

太夫道中で着目したいのはその足元。11月だというのに裸足なのは、独特の三枚歯の高下駄「三つ足」を履くためです。下駄の裏を見せずにすり足で歩く「内八文字」という足捌きで、ゆっくりと歩を進める太夫。30キロ近い装束をつけ高さが17センチもある下駄で優雅に歩くには体力なしでは務まりません。

古典から今様まで祭の醍醐味を味わう

「夕霧祭」と同日に嵐山で開催されるもうひとつの祭が「嵐山もみじ祭」。桂川に色とりどり、さまざまなテーマを掲げた船が浮かび、色づき始めた紅葉を背景に実にカラフルな風景を見ることができます。

「夕霧祭」が静かな、古典的な行事である一方、「嵐山もみじ祭」はとてもにぎやかで色とりどりな祭です。各船のテーマは「箏曲」「今様」など古典芸能に因んだものから「東映太秦映画村」など趣向の異なる船もあり、古の時代から現代までさまざまな雅が一堂に集まります。船上での狂言や雅楽を無料で見られることもあり、毎年大勢の人が足を運びます。

「嵐山もみじ祭」は一日を通して開催されますが、午前と午後では演目が異なります。また太夫道中が行われる午後2時半ごろになると道程が柵で囲まれるため、一層の混雑が予想されます。

古き良きをたいせつに守り伝える祭と、にぎやかに雅を楽しむ祭。紅葉の時期のなかでも最も混み合う週末ですが、このふたつを同じ日に体験できる「濃い」機会はそうそうありません。

ぜひ覚悟を決めて、嵐山へお出かけになってみてください。

 

<本文監修>

観光ガイド「京都旅屋」代表   吉村晋弥   プロフィール>