ななつの嵐山WEB MAGAZINE

コラム2019.03.19

雨の日、呼吸する宝厳院の庭

嵐山は、お天気の良い日だけが美しいのではありません。雨が降っている日、あるいは雨上がりの時間にこそ訪れていただきたい場所があります。

なかでも雨の日におすすめなのが宝厳院。天龍寺の南にあって行きやすく、春秋に特別公開をされて、いずれも大変美しい光景に出会えるお寺です。春の公開は6月30日までで、雨の降る時期も苔が見事な艶めきで目を楽しませてくれます。

作庭は室町時代、平成14年にこの地へ移転。

京都で苔の庭といえば、世界遺産にも登録されている西芳寺(通称 苔寺)が有名ですが、ここ宝厳院の庭にもさまざまな種類の苔が根付き、雨を含んだその様子は静かに呼吸しているかのようにも見えます。

宝厳院の庭は、仏が説法する様子を意味する「獅子吼(ししく)」の庭と呼ばれ、鳥の声や風の音などにも耳を傾けてほしいとの願いが込められているそう。

境内には獅子岩のほかにも碧岩などの巨石が配されているのが特徴で、それぞれ苔をまとって年月を感じさせてくれます。獅子岩は、通り過ぎてから振り返ると、まさに獅子の横顔のように見えるので必見です。

雨の日は出かけるのも億劫になりがちですが、宝厳院の素晴らしい雨の庭を目にすると、出かけないなんてむしろもったいないと感じるほど。雨の日は概して人も少なく、ひっそりとおだやかな時間が流れています。

お抹茶代500円を払えば、風情ある東屋で庭を眺めながら、お茶と落雁(らくがん)をいただくこともできます。お宅に招かれたかのようなひとときが過ごせます。

苦難と救済、時代をこえるメッセージ

また巨石だけでなく、禅の思想を物語絵のように再現した枯山水もユニーク。丸い石が敷き詰められた「苦海」を渡り、三つの石(三尊石)で表現された「釈迦如来」のもとへ説法を聴きにいく「獣」たち。苦海と陸地のあいだに置かれた石(獣石群)がその獣を表現しています。苦海を渡りきれなかった獣を救うための「舟石」も置かれ、苦しみと慈悲の心を読み取ることができます。

枯山水は、宝厳寺の入口を入ってすぐのところにあります。雨の日は先を急がず、ゆっくりとこの風情あるジオラマを眺めてみてください。その先に広がる美しい苔の庭との対比がきっと心に映えるはず。

<本文監修>

観光ガイド「京都旅屋」代表   吉村晋弥   プロフィール>