ななつの嵐山WEB MAGAZINE

コラム2018.08.27

五山の送り火と嵐山灯篭流し

8月16日は、五山送り火(ござんのおくりび)がありました。お盆の間に戻ってきた先祖の霊を送る行事です。嵐山・渡月橋あたりからは、5つの送り火の中でも「鳥居形」をのぞむことができます。

お盆の締めくくりに行われる五山送り火。新聞やニュースでは、その観光客の多さから観光行事と考える方も多いかと思いますが、京都の伝統行事です。

お盆の締めくくりに行われる五山送り火。正確には観光行事ではなく、お盆にお迎えをしたご先祖様の霊「お精霊(しょうらい)さん」が迷わず冥界へと戻れるようにと夜空に灯す祈りの炎です。庶民の信仰心から生まれ、長年受け継がれてきた京都の大切な伝統行事です。五山の中でも最初に炎が灯されるのが東山の「大」で、20時の点火のあと、5分おきに「妙法」「船形」「左大文字」「鳥居形」と、各火床が灯っていきます。それぞれの送り火は、その炎が灯る山麓の集落の人々によって維持されています。

点火順は現在は最も東にある「大」から最も西の「鳥居形」まで、極楽浄土に向かって順に西へと灯っていくとされますが、昭和30年代は「大」が最後に灯っていました。火床の数も時代ごとに異なっていたり、お盆以外にも灯されるなど、送り火の細かい方法は時代によって変化をしています。

さて、鳥居形は愛宕神社の鳥居の形を表しているとされ、一帯の地名は鳥居本(とりいもと)と呼ばれて、愛宕神社の一之鳥居もあります。仏教行事の送り火に鳥居の形があるのも面白いですが、これは愛宕神社がかつては白雲寺というお寺であったためで、江戸時代までの神仏習合の観念ではお寺に鳥居があってもなんの不思議もありませんでした。

五山送り火 「鳥居形」の火床の数は108つ。この数字は人間の煩悩の数で、炎によって煩悩を焼き尽くすという意味が込められています。鳥居形の火床は松明を差しこむ方式で、火のついた松明を持って走る様子は「火が走る」といわれます。すぐに火がつくように、松やにがたっぷりある松をわざわざ選んで松明にしているそうで、その火床の形も試行錯誤を重ね、火の勢いがよく、しかも長く燃えるように作られています。

桂川では、戦没者の霊を慰める為に灯篭による供養をはじめたことが起源といわれる「嵐山灯篭流し」も執り行われました。

今年も無事に祈りの炎が点り、京都の夏は終盤へと入って行きます。

 

<本文監修>

観光ガイド「京都旅屋」代表   吉村晋弥   プロフィール>