ななつの嵐山WEB MAGAZINE

コラム2018.10.09

嵐山に魅せられた映画俳優

嵐山の西、小倉山が桂川に面した麓に建つ「大河内山荘庭園」をご存知ですか。昭和の映画俳優・大河内傳次郎(おおこうちでんじろう)が莫大な出演料をつぎ込み、30年もの歳月をかけて造り上げた約6000坪の庭。自宅は太秦(うずまさ)の撮影所の近くにあり、仕事がないときは馬に乗って庭造りに通っていたそうです。

映画人はなぜ嵐山に惹かれるのか

傳次郎の庭から連想されるのが、映画監督の故デレク・ジャーマンがつくった庭。こちらはイギリスにあり、写真集『Derek Jarman’s Garden』が出版されたことで世界中にファンを広げました。「大河内山荘庭園」との共通点は、その土地に魅せられ何もないところに自力で庭を造り上げたこと。周囲の自然に溶け込むようなデザインも共通しています。

また今年7月に公開された映画『PEACE NIPPON』にも、撮影に6ヶ月以上かけたという朝焼けに浮かび上がる渡月橋の妖艶な姿が捉えられています。

映画という虚構の世界を創り出す映画人にとって、嵐山は虚構以上になにかドラマを感じさせる場所なのかもしれません。

ここは傳次郎のワンダーランド

さて、庭に話を戻しましょう。

大河内山荘庭園はいわゆる回遊式の庭。一か所に立って眺めるのでなく、ぐるぐる歩きまわってさまざまな庭の表情を楽しむことができます。その中心にあり、傳次郎が晩年を過ごしたという建物「大乗閣」は、寝殿造、書院造、数寄屋造を取り入れた様式美のワンダーランド。庭造りのプロではないからこそ自由に、自分が美しいと思うものを取り入れられたのでしょうか。

それは建物だけでなく、瓦や石で出来たバラエティに富んだ散策路(苑路)だったり、仁和寺の塔から京都タワーへ、嵐山、保津峡と「京都の景観パノラマ」とでも呼べそうなカラフルな景色にも通じています。傳次郎は庭造りが楽しくて仕方なかったんでしょうね。

歩き疲れたらお抹茶と和菓子で休憩

大河内山荘は入場料が1000円かかります。ちょっと高い?と思われるかもしれませんが、入口近くにある茶席で薄茶のお抹茶と、鶴屋吉信製の和菓子を頂けます。入ってすぐ頂くのもよいですが、散策のあとここで一息つくのもおすすめです。

また苑内にある「妙香庵」は15歳以下立ち入り禁止となっており、心静かに庭を眺める場所として使われています。写経ができる机も準備されています。

庭を見て、ありし日の俳優に思いを馳せ、甘いもので癒されて、静かに時を過ごせる。傳次郎製嵐山テーマパーク、とでも呼びたくなる、充実した時間が過ごせるはず。

嵐山に魅せられた映画人の情熱と、彼が残したパノラマ庭園を体験しに、ちょっと足を伸ばしてみてはどうでしょうか。

<本文監修>

観光ガイド「京都旅屋」代表   吉村晋弥   プロフィール>